
土地の境界に関する問題や、売買・相続時に必要となる測量の費用について、疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。土地の境界を明確にする「境界確定測量」は、不動産取引や管理において重要な手続きですが、専門的な内容も多く、費用についても気になるところでしょう。
本記事では、土地家屋調査士に境界確定測量を依頼する際の費用相場や、測量が必要となる具体的なケース、費用の内訳などについて解説します。
【この記事を読んで分かること】
- 土地の境界確定測量の概要と、必要となる主なケース
- 境界確定測量を土地家屋調査士に依頼した場合の費用相場
- 測量費用が変動する要因と、その内訳
目次
土地家屋調査士による境界線の確定測量とは?

境界線の確定測量は、隣接する土地の所有者双方の立会いの下、現地で境界を確認し合い、双方が合意した上で正式な境界線を確定させる作業です。不動産(土地や一戸建てなど)を売却する際や、相続、あるいは将来的な紛争予防のために土地の正確な情報を把握しておきたい場合などに必要です。
測量後には、土地の正確な面積が算出され、境界線には「境界標」と呼ばれる恒久的な標識が設置されます。そして、その成果として「確定測量図」が作成され、将来にわたって土地の境界を証明する重要な資料となります。
確定測量が必要となるケース
境界線の確定測量は、主に以下のような場合に必要とされます。
土地や土地付き一戸建てを売却するとき
土地や建物を売却する際には、買い主や隣接地の所有者との間で境界を明確にしておくことが、後のトラブルを未然に防ぐために重要です。境界が確定している土地は、取引の安全性が高まるため、売却がスムーズに進みやすくなるでしょう。
相続による土地の分割や相続税の物納を行うとき
相続した土地を複数の相続人で分割する場合、正確な境界確定が不可欠です。また相続税を土地で納付する「物納」を行う際にも、税務署に対して確定測量図の提出が求められることが一般的です。
抵当権の設定をするとき
金融機関から融資を受ける際、土地を担保に抵当権を設定する場合、確定測量が必要になることがあります。抵当権を設定するに当たり、金融機関は担保となる土地の価値を正確に評価しなくてはなりません。土地の面積が不明確な場合、適正な評価ができないため、正確な面積を把握するための境界確定測量が求められるのです。
建物を新築するとき
新たに建物を建築する際は、建築基準法などの法令に適合した設計が求められます。特に都市部の住宅密集地などでは、隣地との境界ぎりぎりまで建物を配置するケースも少なくありません。このような場合、土地の正確な寸法が設計の前提となるため、確定測量が重要となります。
現況測量との違い
「確定測量」と類似した用語に「現況測量」がありますが、両者は目的や法的な効力が異なります。
現況測量とは、隣地所有者の立会いを必要とせず、現存するブロック塀やフェンスなどを基に、おおよその境界を測量する方法です。隣地所有者の立会いがない分、費用は境界確定測量に比べて抑えられる傾向にあります。
ただし、現況測量はあくまで現況の構造物に基づいた測量であり、必ずしも実際の境界と一致するとは限りません。そのため、現況測量の結果のみで土地取引を行うと、後に境界に関するトラブルが生じる可能性がある点に注意が必要です。正確性を重視する場合は確定測量の実施が推奨されます。
境界線の確定測量を土地家屋調査士に依頼する費用は?

境界確定測量を土地家屋調査士に依頼する場合、どの程度の費用がかかるのでしょうか。
費用は土地の状況や隣接地の種類によって変動しますが、主に「民民立会い」と「官民立会い」の2つのケースに大別されます。
民民立会いの場合
「民民立会い」とは、測量対象地と隣接する土地が全て個人の所有地や法人の所有地である場合に適用される測量です。国や地方公共団体が所有する土地(官有地)との境界確認作業を含まない、民間同士の境界立会いを指します。
この場合の費用相場は、一般的に30万~50万円程度が目安とされています。
官民立会いの場合
「官民立会い」とは、測量対象地が道路(公道)や河川、水路など、国や地方公共団体が所有・管理する土地(官有地)に接している場合に必要となる測量です。
この場合の費用相場は、一般的に50万~80万円程度が目安です。
官民立会いの場合、民民立会いに比べて費用が高くなる傾向にあります。地方公共団体等の担当者との協議や、提出書類の増加、手続きの煩雑さなどが要因です。
なお、これらの費用はあくまで一般的な目安であり、個別の状況によって変動します。
境界線の確定測量の費用が変動する要因
境界確定測量の費用は、さまざまな要因によって変動します。一般的には、隣接地の数が多く、作業や手続きが煩雑になるほど費用が高くなる傾向にあります。主な変動要因は以下の通りです。
隣接地の数や所有者の状況
隣接する土地の状況は、費用に大きく影響します。
隣接地の数
測量対象地に隣接する土地の数が多いほど、各所有者から境界の同意を得るための手間が増加します。これに伴い、各所への連絡や書類作成の作業量も増えるため、費用が上昇する傾向があります。
隣地所有者の状況
隣地所有者が遠方に居住している場合や、連絡が取りにくい場合、所有者が既に亡くなっており相続人との協議が必要な場合などは、手続きに時間と労力を要するため、費用が高くなる可能性があります。
官有地隣接の有無
前述の通り、測量対象地が公道や河川、水路、公園などの官有地に接している場合は、地方公共団体等の担当者の立会い(官民立会い)が必要となります。これに伴い、申請書類の準備や協議などが発生するため、民民立会いの場合と比較して費用が高くなるのが一般的です。
土地の面積や形状、環境
測量対象となる土地自体の特性も、費用を左右する要因です。
土地の面積や形状
土地が広大であるほど、また地形が複雑であったり、境界線の形状が入り組んでいたりするほど、測量作業に時間と手間がかかるため、費用が高くなる傾向にあります。
土地の周辺環境
測量作業の難易度は、土地の周辺環境によっても変わります。例えば、建物が密集している地域では測量機器の設置や視通の確保が困難であり、手間がかかるため費用が高くなりがちです。また手入れがされていない山林や傾斜地などでは、草刈りなどの測量前の準備作業が必要になることもあり、これらが費用に反映されることもあります。
事務所ごとの単価の違い
土地家屋調査士の報酬は自由化されています。そのため、土地家屋調査士の業務報酬は、各事務所が独自に設定しており、同じ条件や作業内容であっても、依頼する事務所によって費用が異なる場合があります。複数の事務所から見積もりを取り、サービス内容や費用を比較検討するのがおすすめです。
境界線の確定測量の流れと費用内訳
境界確定測量は、どのような流れで進められ、それぞれの段階でどの程度の費用がかかるのでしょうか。以下に、一般的な測量の流れと、各工程における費用の目安を示します。
1.依頼・事前調査
初めに、土地家屋調査士または土地家屋調査士法人に境界確定測量を依頼します。依頼を受けた土地家屋調査士は、まず法務局や役所などで公図や地積測量図、登記事項証明書、道路台帳図、区画整理に関する資料などの関連資料を収集・調査し、土地の権利関係や過去の経緯などを把握します。
この段階での費用の目安は以下の通りです。
- 各種公簿等閲覧・取得手数料:1通当たり数百円程度(資料の種類や通数により変動)
- 事前調査・資料調査業務:6万~12万円程度
事前調査は、正確な測量を行うための基礎となる重要な工程です。
2.境界点確認・境界標設置
事前調査で得られた情報を基に、隣接する土地の所有者や関係者(官有地の場合はその管理者)に立会いを求め、現地の境界候補点について協議・確認を行います。そして、全ての関係者が合意に至った境界点に、コンクリート杭や金属標などの「境界標」を設置します。
この段階での費用の目安は以下の通りです。
- 境界点確認・立会い業務:1境界点当たり2万~4万円程度
- 境界標設置作業:1箇所当たり数千~3万円程度
3.測量・書類作成
関係者間で合意された境界点に基づき、土地家屋調査士が専用の測量機器を用いて精密な測量を実施し、土地の正確な面積や形状を算出します。
また必要に応じ、測量結果を基に作成された「確定測量図」や、隣接地の所有者等と取り交わす「境界確認書」などの成果書類へ、依頼者や隣接地所有者などが署名・捺印を行います。
この段階での費用の目安は以下の通りです。
- 現地測量業務:7万円~
- 各種図面・書類作成業務:3万~10万円程度
4.登記申請
境界確定測量の結果、法務局の登記記録に記載されている土地の面積と、実際に測量した面積との間に差異がある場合には、土地家屋調査士が代理して「土地地積更正登記」を法務局に申請します。これにより、登記記録が正しい面積に更正されます。
この段階での費用の目安は、1万~8万円程度です。
以上が、境界確定測量の一般的な流れと費用の内訳です。依頼から登記申請が完了するまで、1カ月半から3カ月以上がかかります。なお費用はあくまで目安であり、個別の案件によって変動します。
まとめ
境界線の確定測量は、土地の売買、相続、新築など、さまざまな場面で必要です。費用相場は、民民立会いで30万~50万円程度、官民立会いで50万~80万円程度が目安となりますが、土地の面積や形状、隣接地の数、依頼する事務所などによって費用は変動します。そのため、複数の事務所から見積もりを取得し、比較検討するのがおすすめです。
土地の境界に関する問題や測量、登記に関するお悩みは、専門家である土地家屋調査士にご相談ください。土地家屋調査士は、法律と測量の専門知識を駆使して、皆さまの大切な財産である土地の境界を明確にする重要な役割を担っています。
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