合格体験記「様々な人生の変化の中で掴んだ合格」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「様々な人生の変化の中で掴んだ合格」

体験記

 体験記

Y.T さん(大阪府) 平成21年度合格

◆土家屋調査士試験受験のきっかけ

 平成17年6月,地元の司法書士兼土地家屋調査士事務所に補助者として就職することになりました。前年に宅建試験に合格していましたが不動産関連の職に就くのは初めてで,恥ずかしながらその時まで土地家屋調査士という資格があることすら知りませんでした。
就職先の先生は若い頃,土地の測量も行っていたそうですが,現在は司法書士業務が中心の職場です。調査士業務としては主に建物の表題登記と建物を建築したことに伴う土地の地目変更登記をしています。そして機械を導入していないため,建物の表題登記申請に必要となる建物図面・各階平面図はロットリング等を用いて手描きしています。
元々図面など描いたことがなかった私は,就職当初この図面の手描きに四苦八苦することになりました。しかも図面を描くルール自体,全く分かりません。先生や同僚にいろいろなポイントを教わりながら描き直しを繰り返し,何日もかけてやっとひと仕事を終えるという有様でした。
また,建物表題登記申請の準備として法務局で様々な図面を調べますが,この図面類の意味が分かりません。事務所に何度も電話しては所長の指示を仰ぎ,とにかく言われるがまま図面をコピーして機械的に事務所に持ち帰る毎日でした。手先は不器用,自分がやっている仕事の意味が分からない。これではいけない,土地家屋調査士の仕事内容を学び,図面もスムーズに描けるようになりたい,と考え土地家屋調査士試験の学習を開始しました。

◆インプット期

 東京法経学院の通信講座で約3ヶ月半学習し,平成18年5月に受験した測量士補試験の合格が判明した平成18年の夏,東京法経学院の「土地家屋調査士最短合格講座」を自宅でDVD 受講することにしました。
教材が届き気分良くDVD を見始めた9月半ば,思わぬ災難が。車を運転して友人宅に向かう途中,右折待ちで停車していたところを左後ろから玉突き衝突されたのです。案の定頸椎捻挫,俗に言うむち打ち症になりました。事故翌日から首から肩,背中が熱を持ち,痛くて顔を左にも下にも向けられません。仕事の書類も根気よく読むことができず,少し高い台に置いて目を下に向けて読む程度です。帰宅後は食事の用意もままならず,とにかく横になりたい毎日が続きました。
当然のことながらDVD 学習は中断。仕事の後は週2,3回鍼灸整骨院に通い,とにかく体を治すことに専念することにしました。体を治さなくては仕事も勉強も成立しないと考えたからです。
徐々に首の調子が良くなってきた平成18年12月頃からDVD 学習を再開。受講期間延長を申し出て翌年5月末頃までに何とか全てのDVDを見終えました。
この当時の自主学習としては,最短合格講座の提出課題を提出する程度でした。また平成19年3月頃から「新・合格DATABASE」を毎日少しずつ解くようにしていました。仕事は9時から5時までで残業がなく,必ず定時にあがれるのですが,帰宅すると家事が気になり勉強にならないため,仕事帰りに近くのショッピングセンターのカフェなどに立ち寄って「新・合格DATABASE」を100肢程度,1〜2時間かけて解いていました。

◆急遽母の右手の手術が決定

 インプットを終え東京法経学院のアウトプット講座にそろそろ移りたいなと思っていた平成19年7月末,実家の母がなるべく早い時期に大学病院で右手の手術を受けなくてはならないことが分かりました。
私は平成15年春に結婚して夫と2人で暮らしてきましたが,一人っ子で父を早く亡くし結婚までは母と2人暮らしだったため,一人暮らしになった母と同じ市に住み,母が体調を崩した時などには実家と自宅を行き来していました。
母が入院するとなると,入院の付き添い,インフォームドコンセントや手術への立会い,入院中の看病は私がすべて行うことになります。
また実家で暮らしている小型犬が我が家に滞在することになります。空き家になる実家のことも気になるためちょくちょく実家に寄る必要も出てきます。
これは一時的であれ勉強できない時期が来るなと思い「新・合格DATABASE」を繰り返し学習するのに加え,母が入院する9月中旬まで「書式合格演習ノート」の問題を1日1問ずつ解くことにしました。この演習で図面を描き慣れてきたため,仕事の場面でも建物図面・各階平面図を描くのが少しずつ楽になってきました。
幸い私自身のむち打ち症の治療は8月中で終了し(熱心に治療してくださった鍼灸整骨院の先生のお父様は偶然土地家屋調査士でした)母の入院までの約1か月間に,しばらくは利き手の右手が使えない母のために食洗機や電動歯ブラシ,介護パジャマ等を買い揃え,入院準備を進めることができました。

◆2ヶ月間の学習中断

 9月中旬,有給休暇をもらって母を大学病院に入院させ,実家の小型犬を一時的に引き取りました。元々足腰を痛めていた母と長時間の散歩ができていなかった犬は大喜びで,私とは朝晩合わせて1時間半ほど散歩しようとします。
寂しがりで甘えん坊のため,仕事が終わって帰宅すると私の後をついて歩きます。愛らしいため気持はとても和みますが,世話には手間と体力と根気が必要なことも事実です。
入院3日目,全身麻酔にて母が手術を受けました。幸い手術は無事成功しました。術後も仕事の後,2日に1度は洗濯物やお茶を持って病院に通いました。そして術後約10日でギプスをしたまま退院となりました。
退院後約3週間,母は右手のギプスをしたままで1人暮らしをしなければならなくなりました。介護保険等を使って家事支援の方にも来ていただきながら,ギプスが取れるまでは私も仕事帰りに自転車で実家に寄って入浴の介助をしたり,野菜を切ったりといった家事の手伝いをしました。帰宅すると今度は犬の世話に自宅の家事。
母の退院後も様々な用事に追われ1秒も勉強しないまま気がつくと眠っている日々が続きました。

◆東京法経学院にてアウトプット開始

 ギプスが取れ,何とか犬の世話もできるところまで母が回復してきた11月,犬を実家に戻しました。また平成18年9月の交通事故の示談交渉もこの頃終了しました。
生活が落ち着いてきたので東京法経学院の「書式徹底征服スーパーゼミ」に通うことにしました。インプットは自分のペースで行うほうがより身につくと思いますが,アウトプットは時間制限の中で訓練すべきだと考えたので通学講座を選びました。
初めて東京法経学院梅田校を訪れてみると,スタッフの皆さんは受講生に対して温かく,また学習に来られている方も真面目な方ばかりで,落ち着いて学習できる環境だなと思いました。
学習中断もあって忘れてしまっていることも多く,得点的には振るわないことも多かったですが,とにかく週1回,どっぷりと学習環境に浸れることに意義を感じ,休まず通いました。最初は時間が足りずに度々白紙で提出していた土地の書式も,少しずつ書ける量が増えていきました。

◆オンライン申請特例方式と転居

 平成20年1月15日から,登記申請のオンライン特例方式が始まりました。前年からオンライン申請システムを利用して登記事項証明書を取得したり定款の電子認証を受けたりはしていましたが,権利の登記の申請となるとかなり複雑です。しかし導入が遅れると追いつくのがより億劫になるのではないかと思い,システム開始の初日から見よう見まねで権利の登記の申請に挑戦しました。この経験は,調査士試験の択一問題でオンライン特例方式等が問われたときに役立ちました。
また丁度この頃,同一市内での転居が決まりました。元々住んでいた家に若干の問題点があり,いつか引っ越そうと夫婦で話し合っていたのですが,ふと見たネットの不動産広告に条件の合う家があり,一気に動いてしまうことになったのです。
職場もプライベートも何かと変化が続くため負担ではありましたが,何とか2月上旬に転居を完了。引越しの前後,教材が段ボールに入りこんでしまい,見たい資料が出てこないことがありましたがめげずに「書式徹底征服スーパーゼミ」に続く「ベストセレクト答練」に通いました。
民法については宅建や行政書士試験の合格経験があったので,調査士試験向けの特別な対策はしませんでした。しかし相変わらず土地の求積・作図には不安を持っていたので,この頃には通信教材で「調査士試験に必要な数学と求積」「新・求積のための関数電卓講座」「新・合格レベル作図講座」を受講しました。
4月からは「実戦答練」が始まりました。どんどん答練のレベルが上がる割には相変わらず土地に不安がありましたので,GW には通学で「GW 特別集中講座求積特訓講座」も受講しました。本試験過去問について全く解いたことがなかったことにも不安を感じ,5月中に東京法経学院から出ている「本試験問題と詳細解説」をひと回ししました。

◆また母の手術が決定

 20年ほど前から膝が痛いと言いだしていた母が,7月末,遂に左膝の手術を受けると言い出しました。実は既に主治医は平成16年頃から手術をほのめかしておられたのですが,本人が嫌がるため延び延びになっていたのです。私としては「やっと言い出してくれた」と内心ホッとしました。
しかしまた母が入院するとなると私が忙しくなってしまいます。入院は10月末,手術は11月初めとのことでしたので,8月中精一杯勉強して初めての本試験に臨むことにしました。これまで受けた答練の復習,ミスをしたポイントのミスノート作り,「本試験問題と詳細解説」の解き直しをしました。直前期には東京法経学院の「書式完成模試科」「直前ファイナル」も受講しました。

◆1回目の受験とその後

 答練では必ず土地→建物→択一,の順で解くことにしていたので,本番でもその順序で解きましたが,土地に取りかかった段階で未知の“コンパス法”が出てきて一気にやる気を失いました。択一はそこそこできたように感じ,実際17問正解でしたが,書式がボロボロで合格点に3点不足し不合格でした。
しかしそこで全く落ち込まなかった私は,翌年も頑張って受験しようと決意。試験後の9,10月は少し羽を伸ばして友人に会ったり夫と1泊旅行に出かけたりし,10月末からの母の入院に備えました。
左膝に人工関節を埋め込む手術を受けた母の入院は,10月末から12月上旬に及びました。その間,右手の手術の際と同じように忙しくなりましたが,ギプスをしたままの退院となった右手の場合と異なり,1本杖で歩けるようになるまで入院させていただけたので却って安心でした。しかも前回と同じ大学病院の同じ整形外科での手術で,前回の経験から自分なりの看病マニュアルが出来上がっていたため,かなり合理的に病院通いをすることができました。
母が犬の散歩ができるまでに回復した平成21年1月半ばまで犬が我が家にいたため,例によって犬との生活で体力を消耗し,結局2ヶ月半,またも1秒も勉強しないまま眠ってしまう生活となりました。

◆合格した年の春から夏にかけて

 2月から前年同様東京法経学院の「ベストセレクト答練」,引き続いて「実戦答練」を受講することにしました。その間で前年には上手く使いこなせていなかった複素数計算も出来るようになり,土地の求積が少しだけ進化しました。
この勉強の過程で前年の学習では理解できていなかった点を多く発見。前年にまかり間違って合格して実務に出ていたらとんでもないことになっていたのではないかと冷や汗をかくこと度々でした。
暖かくなってきた4月下旬にはまた母が入院して手術することに。左膝が順調に回復したため,同じ先生に執刀していただいて今度は右膝に人工関節を埋め込むことになりました。入院期間は左膝の時より少し短く,5月末に無事退院することができました。この間も例によって看病や犬の世話で平日は全く勉強時間がとれませんでしたが,週末の1日,何もかも放り出して東京法経学院に通ったため,辛うじて実力を維持できたように思います。犬を実家に戻した6月半ばから本試験まで残り約2か月。ここからはとことん自分のために時間を使うことにしました。7月以降は答練がない休日も東京法経学院梅田校の自習室に通いました。そこで2月から受けた答練全問をもう一度解き直し,間違えたポイントはどんどんミスノートに書き込んでいきました。前年のサブプライム問題の影響で収入が減っていた上,度重なる母の手術や犬の病気治療等で随分出費をしていたので,合格した年は経済的にゆとりがありませんでした。
しかし実戦答練の解説講義の際,濱本先生が「8月の直前ファイナルは受けて下さいよ」と仰っていたので,これだけは昨年と重複するものの再度受講しようと決め,申し込みました。どうにかこうにか受講したい講座が全て受けられ たので,精神的に落ち着くことができたように思います。8月のお盆休みには前年に購入していた「本試験問題と詳細解説」と平成20年度の問題を一回しし,本試験日を迎えました。

◆平成21年度の本試験の感想

 土地の書式問題は一見簡単そうでしたが,閃きがなく最後の詰めで苦しむことに。しかし前年“コンパス法”にアレルギーを起こして思考停止に陥ったことを反省し,答案に空欄は一切作らないと決めていたので分からないところも無理矢理全て埋めました。
建物は実務でやっているような居宅が出てきたので嬉しくなって取りかかりました。構造材が書かれておらず,見たこともない屋根材が出てきたりしていましたが,私が実務で見たことがないことが答えになることはないだろうと勝手に開き直り「木造かわらぶき3階建」と決め打ちしてどんどん解き進めました。
択一は出来たという感触があまりなく,後味の悪いものでした。前年の択一試験は結構出来たという感触があっただけに余計不安が募りました。
帰宅後,この7年余り日曜の夜の日課としているスポーツクラブでのヨガの最中,散々悩んだ土地の解き方を閃いてしまいました。試験場で閃かないことを運動中に閃くか!と思うと悔しくなり,すっかり凹んでしまいました。

◆合格が分かって

 実は職場では勉強していることを誰にも話していなかったのですが,口述試験を受けるために有給休暇を取ることとなり,初めてカミングアウトしました。特に所長はとてもびっくりしていました。「ま,君の場合は民法を勉強する必要がないから楽やわな」と言われました。所長が調査士試験に合格したのは私が0歳の頃で口述試験はなかったようですが,気持ち良く送り出していただきました。定時にあがれる完全週休2日の職場で,落ち着いて働かせてもらってきたからこそ合格できたように思い,所長にはとても感謝しています。
考えてみると勉強を始めてから様々なことがあり,調査士試験の受験期間は自分の人生としてもかなり変化の激しい時期でした。そんな中,頚椎捻挫の治療に尽力してくださった先生方,母の度重なる入院・手術・リハビリを支えて下さった大学病院のスタッフの皆様,受講生をしっかり見守り・記憶して親切に接して下さった東京法経学院の講師の先生やスタッフの皆様・勉強に行くわと言って休日に飛び出していく私を黙って見守り自由にさせてくれた夫,手間ばかりかけてくれるものの心を和ませてくれる我が家の愛犬,その他あらゆる周囲の人や動物,出来事のお陰で今回の合格を掴めたと思います。
私を包んでくれてきた環境全てに感謝をして筆を置きたいと思います。