合格体験記「“もう一度だけ”をモノにした喜び」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「“もう一度だけ”をモノにした喜び」

体験記

 体験記

K.O さん(福島県)

 やっと合格できた,というのが実感です。
私は,プロフィールからわかるとおり長期学習,多数回受験者です。そのため,初学者の方には同じ過ちをしないために,私と同じく心ならずも長期学習,多数回受験に陥いっている方には早くそこから抜け出すために,読んでいただきたいと思います。

◆もう一度だけ受験しよう

 私は以前,司法書士・土地家屋調査士・行政書士事務所で補助者をしていました。ところが,昨年(平成15年)9月末に「事業者都合による解雇予告通知」(片仮名で書けばリストラ?)を受けたのです。受験勉強どころではなくなってしまいました。
私の年齢では,補助者として雇ってくれる事務所はありません。選択を迫られました。もう一度だけ受験をして合格をめざすか,今までの補助者を含めての20数年の測量の経験,受験に要した費用,時間をすべて捨てるか,毎日悩み深酒もしました。出した結論は,「私は土地家屋調査士の仕事が好きだ。一生の仕事にしたい。もう一度だけ受験しよう。」でした。
もう補助者として働きながらの,微温湯の受験ではありません。貯金を取り崩しながらの,苦しく不安の1年間の始まりです。この時,開業してから仕事の幅を拡げるために行政書士の学習も始めましたが,これは負担よりも逆によい気分転換になりました。しかし,苦しいことに変わりはありません。そのため,合格発表で自分の受験番号を見つけた時の喜びは大きく,体が震えたほどでした。

◆目が覚めた言葉

 8回も受験した私ですから,初学者の参考となる学習法はうまく書けませんが,多数回受験者の陥りやすい誤りは,容易に書くことができます。それは,自分が初学者だった頃の真剣で謙虚な心を忘れて,自分は基本的な項目・知識については何回もやっているのだからわかっている,こんなことは知っていると思い込んで,六法も見ず,基本書で確認することもなく捻った問題,難しい問題を解こうとすることです。
しかし,本試験の問題はどうでしょうか。択一式問題,書式問題いずれも基本的な項目・知識について確実に得点すれば,満点は取れなくても必ず合格ラインに達することができるのです。逆にいえば,満点を取るための広い知識,高度な知識は必要ないのです。
私は日々の学習に,実戦答練を使用しましたが,そのなかの内堀先生の「中・上級者に知識,経験で及ばない初学者のなかに,必ず合格者が出る。基本的なことをコツコツと貧欲に吸収していくからです。」との言葉に目が覚める思いがしました。そこで私は,「自分は今回一回だけの受験で合格する初学者である。」と思うことにしたのです。既にわかっていることでも必ず六法で確認し,書式についても一つ一つの項目について,基本書と解説で確認しました。その成果ははっきりと現われ,7月の公開模試において64位と今までにないよい成績でした。これが大きな自信になりました。

◆択一がダメでも…

 本試験において,会場に入る前にしたことは7月の模試の成績表を見て,これだけの成績を残せたんだ,絶対受かると自分に言い聞かせることでした。そして試験場では,閉じられた問題を見ながら,1点でも多く点数を取る。最後まで諦めないぞ,と呟きました。
実際,択一式を始めてみると今まで見たことのない言葉の連続で,何とか択一式が終了したのは予定より10分遅い10時25分でした。あまりよい成績ではないと感じましたが,内堀先生の「択一式の結果を書式に引きずってはダメ。」という言葉を思い出し,土地の書式に集中することにしました。
ところが,トラバースの補正計算に戸惑ってしまい,頭の中が白くなりました。これも落ち着いて考えれば基本的なことなのですが,どうしても計算ができませんでした。建物の書式に移りました。建物は意外に簡単で,気持ちに余裕を持って解くことができました。ここで時刻は,予定より20分オーバーの11時20分。再び土地に戻りましたが,どうしても座標の計算ができずパニック状態に。それでも文章の記述部分を先に書くことで落ち着きを取り戻すことができました。残り30分になり,座標計算をしないで既知点の座標値と寸法から割り出して図面を仕上げました。座標計算4点のうち2点目の計算ができ,答案用紙に記載している時に終了の時刻となってしまいました。結局,残りの2点の座標及びその点に関する辺長計算,求積が残ってしまいました。鉛筆の下書きを消すこともできませんでした。
あとで問題の注意書きを確認して気がついたのですが,鉛筆書きの部分は無効となるのであって,減点とはならないのです。時間に余裕があれば消せばよいのであって,無理に消して答案用紙を痛める必要はないのです。その時間があれば,択一式のマークミス,書式の記載の誤り,漏れをチェックして,1点でも加点する様に努めるべきでした。
私の場合,自己採点では択一式14問,土地6割,建物9割の成績で,決して満足できるものではありませんが,合格できました。

◆最後に

 私が今回,合格することができたのは,次の4点に尽きると思います。

  1. 退路を断たれて,受験を真剣に考えたこと。
  2. 内堀先生の言葉を信じて,基本に立ち返ったこと。
  3. 本試験において,貧欲に1点でも多く加点しようとしたこと。
  4. 自分の努力を信じて,最後まで全力を尽くしたこと。

 最後に,何年も何人もの後輩受験者の合格を見送った末の合格は,長い道程のゴールではなく,スタートであることを肝に銘じ,公正かつ誠実に土地家屋調査士としてこれからの人生を歩んで行こうと思っています。