合格体験記「最低でも合格するには」|土地家屋調査士試験|東京法経学院





土地家屋調査士 合格体験記

「最低でも合格するには」

体験記
北村潤一 さん

 体験記

北村潤一 さん(長崎県) 平成21年度合格

◆はじめに

 それは前回の本試験結果(70.5点(最低合格点:73.0点),択一:37.5点(15/20),書式:33.0点(土地:13.5点,建物:19.5点))を踏まえての目標でした。
僅差で合格できない人がいるとは聞いてはいたのですが,まさか自分がなるとは夢にも思っていませんでした。そこで,次の本試験では必ず合格ではなく,どんな問題,どんな体調,どんな精神状態でも合格するために,私は目標を「最低でも合格する」と設定しました。

◆勉強方法を構築する

 さて,目標を立てたのはいいのですが,闇雲に勉強してもいい結果がでるとは限りません。
そこでより効果的に勉強するために,次のような流れで勉強方法を身につけました。
まず,『ドラゴン桜』(講談社:三田紀房著)を読んで賢くなった気分になります。次にその漫画の中で紹介されている参考図書を読み,漫画では触れていない勉強法の理屈を理解します。
ここまでの行程を敢えて9月から12月末まで続けました。それは,時間を掛けてより効果的な勉強方法を構築したいという理由からです。
そして1月からは実践です。身につけた勉強方法を調査士試験用にアレンジし勉強しました。
よくあることですが,実際うまくいく方法もあればそうでない方法もあります。その時は自分なりにアレンジしたり,止めたりして調整しました。併せて雑誌にも勉強法関連の特集があれば,それも参考にしました。
余談ですが,私はこの期間一度も本を買わずに,すべて図書館から借りました。インターネットを利用すれば近所の図書館の所蔵を検索でき,場合によっては予約も可能ですのでとても便利です。

◆習慣化

 自分なりの勉強方法を確立したものの,毎日勉強するのは大変でした。そこで,勉強をなるべく苦痛と感じないように,そして合格に向けて一歩一歩進んでいると自分を盛り上げるように工夫しました。
まず,カレンダーに試験日までの日数,その日の勉強時間を記入するようにし,頑張っているんだという演出をしました。それから,勉強の計画を事前に数か月分作成し,それを毎日ノルマとしてこなすようにしました。私はその日の気分によって勉強量のバラツキを避けるために,例えば○月○日は平成○年第○回答練の土地の書式を解く等,細かく決めていました。また確実にノルマをこなせるように最初のうちはノルマを少なくしておき,段々量を多くしました。
それから,平日と休日の勉強時間帯を習慣化し,所定の時間になったら勉強する癖をつけるようにしました。そのため,携帯電話のアラーム機能を使って,勉強開始時間に鳴るようにセットし,ここでも気分による変動を取り除くように工夫しました。

◆オリジナルテキスト作成

 何度か本試験を受験された方は同感だと思いますが,もう何回も勉強して分かっているはずなのに,同じ論点を間違ってしまうということはないでしょうか。私は実際そうだったので,本当に自分が理解しているのかどうかをはっきりさせるために,アウトプットして何が理解できていないのかをはっきりさせようと思いました。
そこで活躍したのがノートです。ノートに記録することで理解した内容を明確にできます。
仮に忘れることがあっても,ノートをきっかけに思い出すことが可能です。以下,私が実践した具体的な方法です。
まずは,テキストを読むことになるのですが,ただ闇雲に読むだけではなく各項目のタイトルから本文の論点はこの内容だろうと予想します。
次に本文を読んで,予想外の内容や理解が不明確なものがあった場合はそれをノートに書き込みます。できれば図を描いたり,自分で理解できる言葉にするなどすれば,一旦頭の中で内容を整理することになるので理解がより深まります。
また可能であれば,勉強仲間にその内容を話してみるとより効果的に理解できます。その時に,思いもかけない質問があっ,説明中に疑問が湧いたりして,もう一度確認したりすることにもなるのでより理解が深まります。これは,記憶した法律知識に,会話をした経験が加わり,より記憶に残りやすくなるようです。
次はテキストで理解した基礎を確認するために,そのジャンルに該当する過去問データベースと模試の問題を解きます。解いた結果は,理解度に応じて○△×をつけておき,その後の見直しに役立てます。間違えた問題や,新たに理解した内容があれば先ほどのノートに書き込みます。その時は関連条文名も書いて,併せて条文も確認します。場合によっては条文そのものをノートに書きます。
書式は択一とは関係なく一日2問(土地・建物各1問)と決めて解くようにしました。解き終わったら,採点するのは当然ですが,なぜ間違ったのか(うっかりミスや理解不足など),次回間違えないようにするにはどう対処するのかを答案用紙に書き込みます。その上で綴じて,以前解いていれば以前と比べて改善されているかどうかをチェックします。同じミスをしているようであればまた先ほどのノートにその内容を書き足します。
このようにして,徹底して自分が分からない所,理解が不十分なところを洗い出していきました。そうして,できあがったノートを毎日勉強を始める前に見直すようにしました。模試や試験前にも,そのノートを中心に見直しました。テキストや書式の解答用紙を見直すのもいいのですが,ノートの方が短時間で最も不得意とするところを,より集中して効果的に見直しすることができて便利でした。

◆模試の活用

 さて,いよいよ勉強の成果発表です。できることなら高得点で順位をよくしたいと思うのは山々ですが,模試はあくまでも模試であって,本番の予行演習です。そのため,私は模試で現在の実力を出し切ることと,弱点を洗い出すことを目標にしました。
まず,現在の実力を出し切る方法です。

  1. 模試をシミュレーションする
    私は問題を解く順番と時間配分を決めていました。まず順番ですが,民法を飛ばして第4問から解くことにします。これは試験開始直後は頭の働きが良くないからです。また,第4問目がもし個数算定問題(例えば正しいのはいくつ?)の場合は,さらに次の問題から解きます。
    これも上記の理由と同じで悩みたくないからです。第20問目まで解いたら,民法の問題を解きます。次は建物の書式を解き,最後に土地の書式を解きます(これは,土地の座標値が算出できるかどうかという難点があり場合によっては,建物の書式を解けない可能性がある為です。)あとは,時間が許す限り,建物→土地→択一(民法以外)→択一(民法)の順に見直しをします。時間配分は択一(30〜40分),建物(45〜50分),土地(45〜60分)と二重目標にします。二重目標にするのは,仮に最初の目標通りに解答ができていない場合でも,次の目標に向けて頑張れますし,気持ちに余裕が持てるからです。
    次に弱点を洗い出す方法です。
  2. シミュレーションした内容をメールする
    送付先としては,できれば勉強仲間にシミュレーションした内容を模試前にメールします。
    いない場合は自分に対してでも構いません。シミュレーションした内容を明文化することで,模試のシミュレーションがより明確にできます。
    また自分にプレッシャーを与えることができます。さらに,模試の後にシミュレーション通りにできたかどうか検証しやすくなります。
  3. 模試後には結果を分析してまたメールする
    シミュレーション通りに模試を受けることができたかを検証します。書式の勉強と同じように問題点を洗い出して,次の模試,本試験に向けての対策をメールします。このメールは本試験で模試と同じミスをしないようにするために後々役に立ちます。
  4. 間違ったところはノートにまとめる
    今回も同じく先ほどのノートに間違ったところ,理解が不十分だったところ,新しく知ったところなどを書き足します。

◆本試験に向けての緊張対策

 試験が近づくにつれてどうしても緊張してしまうものです。私は5回目とはいえ,本試験は一年に一回なのでどうしても緊張してしまいます。私は一ヶ月前から毎週日曜日に試験と同じ時間帯に,過去の模試で今まで解いたことがなく,しかも少し難しめの問題を解くことにしました。本当は基本に立ち返って,これまでの復習をしっかりするところですが,敢えて本試験を意識してそうしました。そのため,知らなかった論点がでてきても深追いはしませんでした。
その代わり,例のノートをしっかり見直ししていました。また本番当日は,試験直前に家族に電話をして,リラックスするようにしました。
ここでは試験のことには触れずにたわいもない話をするように心懸けました。
それから,試験開始前は見直しをせずに散歩をしました。見直しをしても頭を混乱させてしまうだけだからです。試験が始まってもすぐには問題を解かず周りを見渡しました。これは,周囲の状況をみて冷静になるためです。そして模試同様にシミュレーション通り問題をこなしていきました。試験中には合格することを意識せずに,目の前の問題を解くことに集中しました。下手に合格を意識すると目の前の問題を解くことが疎かになってしまうためです。

◆合格

 そして幸運にも合格することができました。合否の結果は正直不安でしたが,当初の目標をなんとかクリアし,そこそこの結果(77.0点(最低合格点:70.5点),択一:37.5点(15/20),書式:39.5点(土地:15.0点,建物:24.5点))を出すことができました。その時の感想は,嬉しいというのは当然ですが,どちらかというとほっとしたという気持ちが大きかったです。

◆最後に

 ここまで私の合格体験記にお付き合いくださいましてありがとうございました。皆さんの感想はいかがでしょうか。試験に合格したいのは山々だけど,正直そこまで努力するのは億劫だなと思われている方が大半なのではないでしょうか。
実は私も試験勉強をしているとき,ここまで努力するのは無駄ではないかと思っていました。
一方,試験は運が左右するという考え方もあります。
参考程度ですが,ある新聞記事に「運と努力どっちが人生を左右する?」という読者アンケートがありました。その読者の一人のコメントです。「偶然を活かすことができる人は運が良い人,活かせない人は運が悪い人で,偶然を活かせるかどうかはその人の過去の経験(努力の結果)。」なかなか深いですね。
では,皆さんのご健闘を期待しております。