「やる気や気合があり、覚悟ができたときには何とかなる。」|合格体験記|司法書士試験|東京法経学院





司法書士 合格体験記

「やる気や気合があり、覚悟ができたときには何とかなる。」

体験記

 体験記

S.Sさん(三重県)

◆司法書士試験受験の決心

 会社勤めをして,仕事にも慣れて,それなりに楽しく充実した日を過ごしていたとき,気づいた。きっかけは,大学時代の友人との電話。たわいない話だった。友人が,意気揚々と仕事の自慢話をする。しかし,私の口からそれに対抗する自慢話は出なかった。別に,自慢話がないわけではない。仕事も3年目に入り,店を任されるぐらいにはなっていた。友人の自慢話が終わり次第,電話は切れた。2,3分で結論が出た。「仕事をやめよう。」
経営学部に在籍して,どこにでもいる学生をしていた私は,大学3年のときに,自己啓発のつもりで某予備校の司法書士基礎講座を受講した。漠然と「自分の名前で仕事をしたい。」と思っていて,その選択肢の一つとして考えていたのだが,勉強嫌いでギャンブル好きのあほ学生には,この難関試験に立ち向かう気持ちすら生まれず,雲の上の職業に思え,司法書士となるイメージすら持つことがなく,ただこの社会貢献度の大きな資格を遠くから見つめることで精一杯だった。
年が明けると就職活動期となったが,「自分の名前で仕事をしたい。」の考えにあう企業は一つもなく,将来的に独立が可能であろう業種を選んで面接を受け,就職…。3年目に,きっかけが来た。「自分の名前で仕事をして,その仕事を胸を張って語ろう。司法書士ならその可能性がある。」と決心した。

◆働きながらか,専業か

 「働きながら合格する人は偉い。」と考える人は,まちがっていない。しかし,環境が整っているならば,専業受験生となる方がより確実に合格できるにちがいない。また,退路を絶つことにより,真剣度アップはまちがいないだろう。
3年働いた分の貯金はあるものの,あまり余裕のなかった私は,なるべく安く,かつ1年で合格できるように予備校を探した。「独学で」という考えは,微塵もなかった。テーマは,「より確実に合格する。」でスタートしているからだ。結局30万円ほどで,ある予備校の夜間の合格フルパックコースを受講した。
法学部出身でない私は,法律の勉強というものをあまり理解しておらず,講義の予習→講義→過去問を使った復習を繰り返したものの,六法は指が切れそうなほどの新品さを保ったままだった。夜間で,受講生もわずかであったため,受験仲間がほとんどできず,いつも1人で勉強をしていたが,解らないところは容赦なく講師を捕まえて質問した。「またお前か」といった雰囲気など無視である。この姿勢は今でもよかったと思うし,特に法学部以外の生徒にとっては法律用語を覚えることから始まるわけなので,ある程度あたり構わず行くべきである。
何とか司法書士試験の全体像が見えてきたところで,平成15年本試験となった。この試験の本当の難しさすらわからないまま,妙な自信とともに受験したお陰で,1次30問と上できだった。しかし,2次は21問と足切り。商登書式で添付書類を一つ忘れ,不登書式で清算型遺贈の知識がなく,2〜3割のできだった。
本試験終了から1週間は何もせず,ただ落ちたことについていろいろ考えた。この試験の本当の難しさに気づいていないのではないか?1次30問は,たまたまではないか?もっと基礎を固めるべきではないか?などと考えた挙げ句,予備校巡りをすることにした。
そのなかで,全日制生講義の東京法経学院へとたどり着いた。そこで,本当の法律の勉強の仕方を学んだことはいうまでもなく,切磋琢磨できる受験仲間を得たことが大きかった。
六法は瞬く間に汚れ,貼付けや書き込みばかりとなり,それまで宙に浮いたような感じだった知識に,根が張られていく感覚を覚えた。さらに,覚えることの膨大な量に気づき,「1年目は間違えていた」と思うのにさして時間はかからなかった。皆がいうように,この試験の最大の難所は,科目の多さとその細かさである。これらをいかにリンクさせ,効率よく頭に残し,試験当日までもっていくかにかかっている。
平成16年本試験は,1次29問,2次27問,商登書式ほぼ満点(不動産書式不明)という成績で合格した。

◆個人的な勉強方法

 「どうやって勉強した?」よく聞かれる質問である。たまに私は,「気合いですよ。」と訳のわからない答え方をする。実は,何がこの試験の勉強法として有効なのか,よくわからないのが本音である。
受験時代は,目の前に覚えなければならない大量の判例,条文,先例が積み上げられ,どこから手をつけたらよいのかわからなくなり,その山積み情報の周りを,うろうろしてしまうことがある。しかし,「合格するには」結局,それらを自分のなかに流し込んでいくしかない。その流し込むときに,雑なことをすると消化不良を起こし労力が水の泡となる。だから,一つ一つ丁寧に,常に「合格するには」を考えて取り組んでいけば,それが最善の方法となるのだろう。
私個人がとった方法をいうと,択一も書式も六法,システムノート(東京法経学院刊)を主に使った。書き込みはもちろん,使える表やまとめは貼り付けていく。苦手科目,不得意科目は,特に熱心に汚した。そうすることで汚れたところに愛着が湧き,得意科目へと変わる。ただし,この作業に満足して「勉強したつもり」になることは極めて危険であるので,作業終了後には必ずその資料を読みふけった。択一対策は,これにプラス過去問でいけると思う。
書式対策は,択一を解くときに書式を思い浮かべながら解くことで,自然と強化される。不登書式の細かい原因,目的などはいちいち気にすることはない。直前に覚えればよいからである。要は,六法やシステムノートを作り上げていくときや,過去問を解くときにしっかり理解しておけば,本番で細かいところの1つや2つまちがえても大丈夫である。怖いのは細かいところだけ覚えて,書式の仕組みをわかっていないことである。仕組みのわかっていないところが出題されると,書式では真っ白で提出ということもあり得るため,注意が必要である。

◆答案練習の利用方法

 基本的に無計画に勉強する私にとって,範囲を区切ってまたは定期的に本試験レベルの問題に当たることのできる答練は,ありがたい存在だった。この答練の利用方法が,合格を左右する一つだと思う。「よい点をとる」「A判定を出す」「周りの奴に負けたくない」との気持ちはとても大切だが,これと同時に答練は実験の場,再度補強する場所を発見する場としても,大切である。私は,特に実験の場として活用した。具体的には解く順番である。書式→択一,択一→書式,書式→択一→書式。もっと細かくいえば,択一商法から解いて前に戻る等である。特に1次試験では,必ず商法から解くことにしていた。
これは,一つは商法が得意なので,早めに得点を確保しておいて安心感を得るため(しかし,答練では自信の割によくなかったのが,今でも悔しい),2つには1問目から解くと周りの解くスピードが気になって,集中できないからである。この方法は早くから気づいて,答練で実践することにより固定されていった。
とにかくいろいろなことを試すことで,問題によって臨機応変に対処できる能力を養っておくのである。当然失敗することがあり,時間の面などで大変な思いをすることや,得点が大幅に下がることもあるが,その時は何がだめだったのかについてよく考えることが,次につながる。この実験についてアドバイスをくれた簗瀬先生には,感謝している。

◆平成16年本試験の2次の再現

 今回の本試験で受験生のほとんどがとまどったのが,2次試験だったと思う。私もそんななかにいた,1人として再現してみる。
配付された書式答案用紙が何だか変である。頭のなかが白くなるのを押さえつつ,試験開始。いつものようにとりあえず37問まで問題冊子をめくるが,書式が異常な量であることに気づき,おそらく時間が足りなくなると思った。しかし,足切りさえクリアさせればよいといい聞かせ,商登書式からかかった。これは,前述したように,商法が得意であることから早めの得点確保による落ち着きを得るためと,商登書式なら慎重に解けば,25点はいける気がしたからだ。そうすれば,もう片方で10点ほどとれば,なんとかなるからだ。慎重に慎重を重ね,1時間かけて商登書式を仕上げた。次に,不登書式の会社分割による所有権移転だけを,これまた慎重に記載。これでおおよそ30点,あとは択一を解いてからにすることにした。
なぜ一気に書式を終わらせなかったかというと,この時点で残り時間が半分になっており,択一にも足切り点がある以上,25問はしっかり正解したいので,時間に余裕があり,冷静なうちに択一を終わらせたかったのである。そして1時間後,3問ほど雑には解いたものの,残り30分弱で書式に再度取りかかった。明らかにまだ白紙の多い解答用紙に「もうむりじゃ〜」との心の叫びとともに,つい口から「なんじゃこの問題!」と小声でいってしまった。しかし,ひたすらボールペンを走らせ,残り30秒切ったところで書き上げた。見直し不可能だったが,マークシートのチェックだけして提出。
文で書くと,さも冷静に判断したかに見えるが,実際は半泣きである。答練での経験が,ここにきて生きたことは間違いなかった。

◆スランプがきたら

 1年,2年と勉強していると,必ずやる気のない時期が来ると思う。特に脱サラして受験生となった場合,出だしからスランプな人が存在すると思う。現に私がそうであった。急に仕事をしなくなると,何となく張りがない。とりあえず,いすに座ってみるがどうも集中できず,苦痛である。これは,勉強慣れをしていないことが原因である。一刻も早く勉強慣れをすることが,まずはスタートとなる。解決策は,とにかく勉強するポーズをとることである。机に向かい,本を広げ,眺めてみる。とにかく1日中やってみる。始めは今日1日なんだったのだろうと思うぐらい無意味なときがほとんどであるが,だんだん本当に勉強するようになる。リハビリと思って継続するうちに苦痛もなくなるだろう。
では,今までやる気があったのに急にやる気がなくなったらどうするか?これは,そのうちやる気が回復するのを期待して,思うように過ごすしかない。だらだら勉強するもよし,何もしないのもよし,現に私は5月ぐらいにスランプがきた。もうあと2ヶ月だというのにやる気がでない。当然成績は下がる一方だったが,とにかく毎日自習室に出ることにして合格したいと念じ,将来司法書士になった自分を思い描いた。幸運にも6月には復活していた。ただ,5月は結局,ろくな勉強をしなかったおかげで,熾烈な追い込みをせざるを得なかった。
しかし,このスランプがあったからこそ,最後の追い込みができたのだろう。つまり,スランプは充電期間が来たと思えばよく,充電が満タンになり少しでもやる気が出てきたときを大切にして,爆発的な追い込みにつなげればよいと思う。

◆生活面について

 アルバイトはした方がいいか?と聞かれたことがある。私は,お金に余裕がないことと趣味が車ということから,1年目から週に2〜3回アルバイトをして月5〜6万を目標に稼いだが,直前期はまったくやめた。こればかりは,人それぞれの事情があるので,何とも言い難いが,とかく受験時代は運動不足になるので,何か体を使ったアルバイトを勧める。ただし,講義や体に差し支えるようなら,やめるべきだ。私は,アルバイト先に自分の今の状態をしっかり説明した上で働いていたので,非常にやりやすかった。アルバイトをするつもりの人はあらいざらいしゃべってしまった方が,円満に働かせてもらえるとの実例であると思う。
生活面は,いわゆる自己管理が重要である。アルバイトについてもあてはまることだが,何においても合格することを第一に考え,それに向かって最善の環境を自らが整えて,守っていくことが大事である。社会に出る年齢の人には,親や周りの人がいちいち注意をしてくることも少ないので,知らず知らずのうちにだらけてしまうことがある。場合によっては,生活を見つめ直す時間を設けるのもありかと思う。

◆最後に3つ

  1. まったく自慢にもならないが,私は宅建を2回落ち,行政書士も1回落ちている。そして,司法書士も本格的に考える前の自己啓発の時期に,2回落ちている。今持っている資格は,普通自動車免許と司法書士だけである。何がいいたいかといえば,やる気も気合いもない覚悟もないときは,どんな試験にも合格しないのである。しかし,やる気や気合いがあり,覚悟ができたときには何とかなる。司法書士試験とは,そんな何とかなる試験なのである。
  2. この試験は理解も大事だが,最終的には暗記がものをいうと思う。あまりの量に誰もが一度は「むりだ〜」「どうやって覚えよう」とつい悩むが,そんな悩む脳の作業すらもったいないのかもしれない。その悩む作業を条文一つ覚えることに費やす方が,「より確実に合格する」方向に向かうような気がする。
  3. 司法書士試験は難関であることはまちがいないが,本当の難関は合格後にくる。これを書いている私は,今司法書士としてどう活動すべきか迷い,悩む不安な日々であり,本職の司法書士の先生に面会を求めたりして,暗中模索である。合格はゴールではなく,ただスタートラインに立つだけであることを忘れてはならないと思う。