寄附講座「土地境界と表示登記」の現状と展望|不動産法律セミナー2014年2月号特集|東京法経学院

寄附講座「土地境界と表示登記」の現状と展望
 香川大学法学部では,香川県土地家屋調査士会に寄附講義のご提供をいただいている。ともすれば理論法学に偏ってしまう法学部教育のなかで,この講座は非常に価値のある輝きを放っている。本稿では,香川大学法学部での寄附講義「土地境界と表示登記」の現状を報告するとともに,私が考えるその未来像を述べたい。
T 寄附講義とは
 一般に「寄附講座」と呼ばれるものは,大学の外の組織(民間企業や地方公共団体など)が資金を大学に提供し,その寄附財産に基づいて研究教育を行うことを指す。たとえば,薬剤メーカーが大学構内に「○○株式会社薬学研究所」とか「△△企業新薬開発研究機関」などの名称の組織をその寄附によって作り,その施設を利用して実務的な研究や教育を行う,という例が考えられる。もちろん,その研究教育内容は,寄附者の意思に沿ったものが通例になる。とはいえ,文科系の学部では,そのような施設を必要とするわけでは必ずしもなく,授業の一環として,人材の提供を受けて大学カリキュラムの中で行われる講義を指すことが多い。
 実は,香川大学でも,「寄附講座」として規定上想定されているのは,上述の理系モデルの寄附講座しかなく,資金提供を受けない講座を指す概念がない。
 今回ご紹介する「土地境界と表示登記」の講座も,大学が資金提供を受けずに行う講座であるので,これを「寄附講義」と定義し,規則等の縛りが及ばない中で提供者である香川県土地家屋調査士会の意思が最も反映する形での講座を開設している。香川大学法学部は香川県土地家屋調査士会から,人材,教材,ノウハウ,労力,などの有形無形の寄附を受けているのである。
 なお,香川大学法学部では,銀行・保険会社等の民間企業やその連合体から提供を受ける「提供講座」などの様々な外部提供講座を開設している。学生が他の法学部にはない実務的な教育を受けることができることを,学部の強みとしている。
U 開講までの経緯
 香川県土地家屋調査士会から,この寄附講義の提案を受けたのは平成20年度中であった。香川県土地家屋調査士会から,土地家屋調査士受験者が漸減している状況が示され,その中で公益的活動としてこの寄附講義を通じて,学生に土地家屋調査士の存在,土地家屋調査士の仕事等について深く知ってもらい,ひいては受験者の増加にもつなげたい,との意図が示された。同会所属の横井靖司先生(東京法経学院講師)をはじめ,様々な方々のご協力によって寄附講義は瞬く間に形をなし,翌年度後期には現在とほぼ変わらない形の寄附講義が出来上がった。
 当初,大学内部には,従来土地家屋調査士受験者が少ないことや,権利の登記の内容が講義されないことに危惧も示されたが,現在では長くしっかりした講義をご提供いただいたことで学内の異論は完全に消え去り,香川大学法学部が目指す人材育成にとって欠かせない講義となっている。
V 講義のコンセプト・目的
W 教授の講義との異同
X 大学生の講義理解度
Y どのような質問を受けているか
Y どのような質問を受けているか
Z 今後の取組みと講義の継続性