行政書士試験が実施されました!試験成果の検討に、また次年度の手がかりとしてご活用ください!
令和2年度 行政書士試験講評
レクチャー 東京法経学院講師 寺本 康之
東京法経学院講師 笠原 裕明
- [全体講評]
昨年度行政書士試験の合格率が10%を超えたため、本年度行政書士試験の難化が予想されていましたが、本年度行政書士試験は、昨年度行政書士試験よりやや易しくなったと感じました。
もっとも、かなり深いところまで学習しないと正解にたどり着くことができない問題 (例えば、問題2、問題6、問題7、問題10、問題14、問題20、問題24、問題29、問題30、問題31、問題32、問題36、問題37、問題50、問題51、問題54、問題55) も出題されました。
このように、難易がある程度はっきりした問題が出題された本年度行政書士試験では、@易しい問題を取りこぼさずに解き、かつ、A記述式問題の問題44および問題45に答えられた方 (完答はできなくとも、各問題から10点程度ずつ得点することができた方) が合格の栄冠を勝ち取られるのではないでしょうか。
- [基礎法学]
問題2は、簡易裁判所に関する問題でしたが、簡易裁判所については、ある程度学習された方でも、管轄や裁判官の員数ぐらいしか覚えていないことから、難問であったと思います。
ある程度学習された方であれば、少なくとも1問は正解したいところです。
- [憲法]
問題3および問題4は、ある程度学習された方であれば、正解に達することができます。
また、問題5も、「議院の権限行使の方向性が他と違うものを選ぶ」という視点で問題をとらえ直せば、正解に達することができます。
しかし、問題6および問題7は、かなり深いところまで学習をしないと解けない問題でした。特に、問題6の衆議院の解散について、選択肢2の内容が衆議院の解散における違憲審査において採られた統治行為論 (苫米地事件、最大判昭45・6・8) に、条約の違憲審査で採られた変則的統治行為論 (砂川事件、最大判昭34・12・16) を混ぜた内容のもので、その二つの違いを意識できる程度まで学習しておかないと解けない問題でした。
ある程度学習された方であれば、3問程度正解したいところです。
- [行政法]
問題形式についてみると、平成25年度行政書士試験以来、3問しか出題されなかった地方自治法から4問出題されました (問題10、問題22〜24)。また、情報公開法から、これまた平成25年度行政書士試験以来、久しぶりに問題が出題されました (問題25。なお、その間に、選択肢の一つとして出題されたことはあります。)。
問題内容についてみると、問題8、問題11〜問題13、問題15〜問題18、問題21〜問題23、問題25および問題26のようにある程度学習された方には点数が取りやすい問題が出題された反面、「普通地方公共団体が締結する契約」に関する問題 (問題10)、「住民訴訟」に関する問題 (問題24) 等のように、かなり深いところまで学習しないと正解にたどり着くことができないような問題もありました。
ある程度学習された方であれば、13問は正解することができそうですので、それから1〜2問程度積み上げて欲しいところです。
- [民法]
本年度は、@「占有改定等」に関する問題 (問題28)、「同時履行の抗弁権」に関する問題 (問題32) のような分野横断的問題、A「根抵当」に関する問題 (問題29)、「選択債権」に関する問題 (問題30)、「債務引受」に関する問題 (問題31) のように受験生の手が回りにくい分野からの問題、B「医療契約に基づく意思の患者に対する義務」に関する問題 (問題34) のように目新しい問題が出題され、ある程度学習された方でも、かなり厳しかったのではないでしょうか (もっとも、その中では、問題28、問題34が比較的解きやすいように感じました。)。
ある程度学習された方であれば、5問は正解することができそうですので、それから1問程度積み上げて欲しいところです。
- [商法・会社法]
商法からは1問、会社法からは設立および株式から各1問、機関から2問出題されました。この構成は、昨年度行政書士試験と同様です
商法の運送営業以外は、頻出分野からの出題であったため、取組みやすかったのではないでしょうか。ある程度学習された方であれば、問題38〜問題40は、正解に達することができる問題でした。
ある程度学習された方であれば、上記3問は正解することができそうですので、それから1問程度積み上げて欲しいところです。
- [多肢選択式]
問題41の判例は、労働組合の統制権と政治活動の自由に関する著名な判例ですが、読んだことのある人は、少なかったのではないでしょうか。そういう意味では、現場思考の問題ですが、比較的空欄を埋めるのが易しかったのではないでしょうか。
問題42は、行政指導に関する問題でした。行政指導の定義は、覚えておかない、現場思考では難しかったのではないでしょうか。
問題43は、平成31年の判例であり、読んだことのある人は、少なかったのではないでしょうか。現場思考の問題ですが、憲法の知識をもとに解くことができる問題でした。
- [記述式]
問題44は、本年度科目別答練第2回において出題させていただいた無効等確認の訴えに関する出題でした。被告適格以外の部分は書けたのではないでしょうか。
問題45は、第三者が詐欺を行った場合に関する条文問題でした。新法において要件が改正された部分であり、民法改正講座などで学習された方は、取組み易かったのではないでしょうか。
問題46は、判例の背信的悪意者排除の理由に関する問題でした。設問の問いかけが大雑把すぎて、多くの方は、何を書いたら良いか迷われたことでしょう。
ある程度学習された方であれば、問題44および問題45において、10点程度ずつ得点することができたのではないでしょうか。
- [一般知識等]
一般知識等では、40%ルールがあるので、最低6問正解しなければなりません。本年度行政書士試験でも、昨年度行政書士試験と同様に、受験生が初めて見るような問題が多かったので、ビックリされたのではないでしょうか。その中で、問題47〜問題49、問題52、問題56〜問題58、問題60の8問が比較的正解に達しやすい問題でした。その他の問題でも、新聞・ニュース等にとどまらず、資格の専門学校等で積極的な情報収集を怠らなかった方であれば、ある程度対応できる問題 (問題50、問題51、問題54、問題55) もありました。
以上
