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平成23年度 土地家屋調査士試験(午後の部)
択一式問題の印象
東京法経学院専任講師 内堀 博夫
本年度の択一式問題の出題科目及び出題数は,例年どおりである。
出題内容については,まず,民法(出題数3問)の「意思表示」,「時効の援用」,「共有」については,いずれも学習されていたと思うが,第1問のイとオ,第2問のア〜オ,第3問のエのような難易度の高い選択肢が含まれているので,合格者となる者でも,その多くは3問中2問の正解であると予想する。
次に,不動産登記法(出題数16問)は,過去問を学習していれば得点できる問題もあるが,高得点を取るためには法令(法,令,規則)と準則,そして先例をすみずみまで理解していなければならなかった。受験者数が減少しても,出題のレベルを落とす気はないようである。やはり,この試験は,国家試験の中でも難関であると言ってよい。
最後に,土地家屋調査士法(出題数1問)は,調査士と調査士法人の業務制限に関する問題であったが,受験生にとって学習上の盲点であったのではないだろうか。得点できた受験生は少ないと予想する。
以上のような分析結果から,合格者となる者の択一式問題の得点の平均は,20問中16〜17問であると予想する。また,書式の得点が高ければ, 15問の正解であっても,筆記合格が可能であると予想する。
<第18問のウの選択肢について>
本肢の場合において,合体による登記等の申請を合体前の所有権の登記がある建物の所有権の登記名義人が申請するときは,合体後の建物の所有権を証する情報として,合体後の建物の持分の割合を証する情報を提供しなければならないので(令別表13項・添付情報欄ハ,平成5・7・30民三5320号通達第六・四・(4)),ウは正しいものとなる。
なお,合体前の建物が既登記であるときは,その登記事項をもって合体前の建物が合体後の建物を構成する部分についての所有権を証する情報の堤供があると解してよいものとされているので(平成5年度全国首席登記官会同における質疑応答第六・二・9),その意味では,所有権の登記名義人は合体後の建物についての所有権を証する情報を提供する必要がないといえるが,仮にそのような意図であれば,問題文において,「合体後の建物についての当該申請人の所有権を証する情報を…」と記述されるのではなく,「合体前の所有権の登記がある建物が合体後の建物を構成する部分についての所有権を証する情報を…」と記述されるべきであったと考える。
本学院の解答としては,正解一覧で第18問は「正解 なし」とし,なお書として,「あえて,正解を出そうとすれば,ア及びウの組合せの2となる。」と記している。 |
「第13問」について,問合せが多いので,特に選択肢のエに関する解説を公表します。
第13問 正解 4
出題テーマ 建物の滅失の登記
各肢の解説
ア 正しい。 (以下略)
イ 誤り。 (以下略)
ウ 正しい。 (以下略)
エ 正しい。先例によれば,一棟の建物全部につき同時に建築し,これを数人の所有者毎に区分建物として表示の登記(現行法上の「表題登記」)がなされているが,当初から構造上の独立性がなく,区分が認められない建物であるのに誤って登記をした場合には,申請又は職権により「錯誤」を登記原因として滅失の登記をすることとされている(昭和38・9・28民甲2658号通達〜「平成23年版 調査士六法」の1242頁に収録),これは,区分所有権の目的となり得ない建物の部分についてなされた区分建物の表題登記は,一不動産一登記記録主義に違反して無効の登記であるから表題部の更正の登記により是正することはできず(無効な登記について更正の登記をし,有効な登記に是正することは許されない。),建物の滅失の登記(本肢は昭和38年に出された通達どおりの表現で記述されているが,法57条に規定する物理的に建物が滅失した場合の「滅失の登記」とは異なるので,現行法令上の用語を使えば,「滅失の登記に準じた表題部の登記の抹消」がふさわしいかもしれない。)をするべきであるとされたものである。そして,滅失の登記をした後に,一棟の建物について,改めて非区分建物として表題登記をすることになる。
なお,本肢の文末の表現が「申請しなければならない。」となっていることから,申請義務の有無を問うものとして読んでしまうと,本肢は「誤り」となるが,申請人(申請義務者)や申請期間(1月以内)についての記述が含まれていないので,そのような意図はないと考える。
オ 正しい。(以下略)
以上により,正しいものはア,ウ,エ及びオの4個であるので,正解は4となる。 |
記述式(書式)問題の解答のポイント
東京法経学院専任講師 荻原 勇
第21問(土地)
宗教法人が,国所有の土地を神社の境内地として時効取得した場合の土地の表題登記に係る申請書及び添付図面の作成並びに取得時効の要件となる具体的事実を記載させる問題である。
時効取得の要件となる具体的事実を記載するには,民法162条1項の所有権の取得時効の要件を理解していなければ,解答できない。所有権を時効取得するには,時効を援用しなければならないが,取得時効の経緯に「取得時効に必要な主張をして」と問題に記載されているので,民法162条1項の要件である具体的事実のみを記載すれば足りるであろう。
土地の測量計算は,多角測量による筆界点A・M・Kの座標計算と,E点及びJ点の座標値に基づく逆計算による方向角及び点間距離(9.732m)とD→Hの方向角(120°)及び点間距離(6.836m)によって,H点の座標値が計算できる。
H点までは,誰でも容易に計算できるが,C点は方向角及び三斜による数値から夾角及び距離等を求める柔軟な発想をする能力が必要となる。
計算の順序として,@地積測量図の三斜の要素から夾角(∠AMB)を算出し,M→A及びM→Eの方向角と前記の夾角∠AMBから,∠BMCの夾角を求める。A∠BMCの夾角と三斜の垂線の長さから,辺長MCを算出する,BM点からC点を求める座標計算をするという順序になる。
申請書の記載では,従来から存する土地についての表題登記であるから,登記原因を「不詳」とするほか,神社の敷地からその土地の地目を「境内地」とし,地積の表示(10uを超えるので,1u未満を切り捨てる。)の記載を間違えてはならない。また,申請を受ける登記所と当該法人の登記を受けた登記所が同一であるということは,注書されていたが,「法務大臣が指定した登記所以外のもの」という記述はなかったので,資格証明書及び住所証明書について,添付を省略できないために,「添付省略」とかっこ書きしてはならない(規則36条1項1号)。
図面の作成については,C点の座標値を求めることができれば,問題なく作成することができるであろう。ただし,図面の様式が現行のものと違うので(旧法時代のもの),うっかりして土地所在図の縮尺の記載を忘れてしまった方も多いであろう。
土地の問題の印象としては,C点の座標値を求めることができるかどうか。また,時効取得の要件となる具体的事実を記述することができるかどうかが,得点を左右することになると思われる。
第22問(建物)
主である建物の増築と区分建物である附属建物の新築及び敷地権の発生を原因とする建物の表題部の変更の登記に係る申請書と図面の作成並びに附属建物の要件の理解を試す問題である。
10番1の建物の附属建物を土地所有者(建物所有者でもある。)の了承を得て,構造上及び利用上の独立性のある部分を増築して,区分建物とした。この場合において,「上記の工事に基づいて家屋番号5番2の建物についてする登記の申請手続を依頼されたものとして」としているので,建物の所有者(畑山邦彦)は,10番1の土地に所在する区分建物を附属建物とする意思で依頼していることが読み取れる。なお,仮に車庫を主である建物として登記をすることができるならば,「建物表題部変更登記」と「区分建物表題登記」を2件の申請書をもって申請することになるので,一の申請情報で申請することはできないことになる。
5番2の主である建物の増築工事は,問題文で,「居間を拡充のため」としているが,見取図に増築部分が図示されているが,2階に増築した旨の記載もなく,平面図もないので,1階のみの増築と判断される。
申請書では,特に附属建物の構造欄への一棟の建物の所在,構造及び床面積及び敷地権の表示の記載と敷地権の原因・日付(平成23年8月4日敷地権)の記載がポイントになる。
図面は,求積と床面積の表示の記載を省略することができるので,作図の分量が多いが,確実に記載しなければならない。
設問の3で,附属建物として登記しようとしたとしても,附属建物と認められない場合,どのような場合に,附属建物として認められないのか,その結論及び理由を記述する問題となっているが,附属建物の要件を理解していれば,記述することができるであろう。
申請書と図面の作成については,取り立てて問題にするところはない平易な問題という印象である。やはり,附属建物に関する問(問3)の解答ができるかどうかが,得点の差につながる問題である。
本年度の記述式試験の問題点の指摘について
東京法経学院
1.本学院では,昨年度の記述式の「解説」の中で指摘したが,新法施行後の過去5年間では,図面の答案用紙及び問題文中の図面は,現行の「不動産登記規則別表の別記1号,2号」でなく,旧法下の旧不動産登記施行細則附録様式の第8号(地積測量図),第8号ノ4(建物図面,各階平面図)が使用されていたが,本年度もこれが使用された。ここで,問題が発生した。それは,第21問の1つの論点となる筈の「土地所在図」と「地積測量図」の2図を作成するのか,便宜,「土地所在図兼地積測量図」として1つの図を作成するのかということが欠如してしまった(前回の平成5年度第16問の「土地表題登記」ではそれが一つの論点となり,図面の名称も問うた。)。また,法定記録事項の「土地所在図の縮尺」の欄がないので,旧法時代と同じく,図の近くに「縮尺1/500」と記載するしかないが,「方法がわからない」,「縮尺を書くことを忘れた」という受験生の声が多いが,これは当然も減点対象となると思う。なぜ,毎年,古い図面用紙を使うか(試験委員は古い図面用紙を使って実務で作成しているのか?)。
2.第22問の問題文中,31頁・32頁で示されている既登記建物の建物図面と各階平面図は,縮尺が500分の1,250分の1のまま載せられている。従前の本試験では必ず縮小して載せていたが,今回は縮尺がピッタリのものなので,受験生はこれを上から写して図面を作成することもできる。本試験では,縮尺がピッタリの図面を問題に載せたことは過去に例がない。
3.第22問の申請書の「建物の表示欄」について
@ 床面積欄で小数点の位置を示す点線が抜けていたので,各自で記載する必要があった(土地の申請書では点線の記載にあったが,それはなぜか?)
A 登記記録がコンピューターにより作成されているので,申請書も平成21・2・20民二500号通達の登記記録例のように記載することが必要である。附属建物の構造欄では,2行にわたって記載することになってしまった(旧法下では,次行にわたってよいとされていたが,このような規定は現在はない。)。本学院では,解答にあたっては,このような場合,各自で横線を記入させている(本試験でも,平成4年度第17問,平成9年度第17問,平成12年度第22問,平成14年度第22問では,横線を受験生に記入させた。)。
以上の3点を指摘したが,調査士試験は,少なくとも国家試験であり,受験料として7,200円を徴収して実施している。
問題文も「本学院の問題のように,誤解のないように記述せよ」とまでは言わないが,受験生が事案を理解できる程度の記載をしてほしい。実務家の試験委員が出題したものを,当局は入念にチェックして,受験生に「本試験問題」として提示すべきである。
<参考> 過去6年間の筆記試験の合格ラインと本年度の予想
土地家屋調査士試験について,最終合格までの過程をみてみましょう。午後の部では,多肢択一式問題(20問)の答案が一定の基準に達しない場合は,記述式問題(2問)の答案を採点することなく,不合格になります。つまり,択一式問題で足切りが行われるわけです。次に,択一式のラインをクリアーした答案について,記述式の採点が行われ,これについても足切りが行われ,最終的には,択一式と記述式の総合点によって合否が決定します。本学院では,平成23年度も「択一」で高得点を獲得した方が有利と予想します。
<注> 下表のうち,平成23年度のものは,あくまでも,過去のデータを基にして本学院が出した予想です。なお,確定データは,最終合格発表時に法務省のHP上で,公表されます。
| 年度 |
択一足切り
(50点満点) |
書式足切り
(50点満点) |
総合点
(100点満点) |
合格者数/出願者数 % |
最終合格者数 |
平成17年度 |
35.0点 |
30.0点 |
71.0点以上 |
6.3% |
527名 |
平成18年度 |
35.0点 |
27.0点 |
67.0点以上 |
6.6% |
520名 |
平成19年度 |
32.5点 |
38.0点 |
78.0点以上 |
6.7% |
503名 |
平成20年度 |
35.0点 |
31.0点 |
73.0点以上 |
6.7% |
488名 |
平成21年度 |
32.5点 |
35.0点 |
70.5点以上 |
6.7% |
486名 |
平成22年度 |
32.5点 |
29.0点 |
67.0点以上 |
7.0% |
471名 |
平成23年度
(予想) |
32.5点 |
35.0点 |
73.0点以上 |
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現在は,「解答速報」の段階で,本学院の詳細な解説(見解)は示していません。正解番号,解答例や合否に関する質問については,電話,メールを含めて,一切お答えしませんので,ご了承下さい。 |
平成23年度調査士試験関連の書籍等のご案内
■雑誌「不動産法律セミナー2011年10月号」
<速報版>として,本試験の問題・答案用紙,詳細解説と正解・解答例,出題傾向分析を収録します。
・本年9月20日全国一斉発売 定価(税込)1,100円
■書籍「平成23年度 調査士本試験問題と詳細解説」
筆記試験の発表後に,<確定版>として,発行します。この書籍は,法令基準日を本年11月1日現在として,本試験の法令基準日(本年4月1日)と異なり,その時点までの法改正にも対応していますので,次年度の受験に役立つものです。
また,本試験の筆記合格者へ緊急依頼して,「平成23年度調査士合格者が語る「私の合格学習法」」も「平成22年度版」(15名の方のものを収録)と同じく,巻末付録として掲載いたします。
・本年12月中旬発行 定価(予価)1,260円
■書籍「新版 調査士書式過去問マスター」2分冊
T 土地編(35問収録予定)
U 建物・区分建物編(40問収録予定)
昭和50年代〜平成23年度までの書式問題について,現行法による修正をして発行する予定です。約6年半ぶりに「書式過去問マスター」が復活します。
・本年11月中旬〜12月中旬に2冊を発行予定 |
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