「人間はもともと一読では覚えられない」
M.Kさん(東京都) 平成18年度合格
◆はじめに
私は,受験当時は25歳で,法科大学院3年生(在学中)でした。将来,新司法試験に合格して弁護士になることが当面の目標ですが,その試験の受験前に,何か自分で成し遂げたことを資格合格という形で残しておき,また,その合格を一つの起爆剤として今後の自分の勉強をより一層進めていきたいと思い,宅建を受験しました。
宅建の受験科目は,ご承知のように,大きく[1]権利関係,[2]法令上の制限,[3]宅建業法に分かれています。このうち,[1]の権利関係については大学時代に旧司法試験対策をしていたこともあり,ある程度は理解があったので,何とかなるのではないかと思いましたが,[2]の法令上の制限や[3]の宅建業法については,今まで条文すら見たこともない状態で,正直,不安でした。
しかし,少なくとも,[2]の法令上の制限は主に都市計画法や建築基準法であり,この法律は法科大学院においては行政法という科目で,個別法の解釈問題としてよく採り上げられる法律で,実は自分の新司法試験対策においても決して無駄にはならないのです。そこで,そうしたことを念頭に置き,インセンティブを高めながら前向きに勉強をしていきました。そして,現在でもそれは間違いではなかったことを確信しています。
◆受験勉強について
そうはいっても,受験する年の8月下旬(大学院は夏休み中)段階で,私は何一つ,宅建の情報について分からなかったので,とりあえず規模が大きい書店に行き,様々な人の合格体験記を読みました。そこで分かったことは,たいていの合格者は,軸となるテキストを何度も読み,過去問を3〜5回は解いているということでした。
そこで,私もその方法を採り,書店で1つのテキストと3冊の過去問(理由がなるべく詳しいものを選ぶ)を買って,勉強をすることにしました。
最初は,前述のような勉強に対するインセンティブもあったので,毎日朝5時に起きて,7時には大学院で勉強を開始することを目標としてやってきました。しかし,夏休みが終わると,大学院の授業にも追われ,宅建の勉強は,平日は3時間,土日休日は6,7時間しかかけられなくなりました。また,「中学校は第一種低層住居専用地域に建てられるか」,「何週間後までに届け出るか」など,覚えるべきところが多く,正直つらかったですが,我慢して覚え込みました。
ここで,旧司法試験受験時代に私の先輩が述べていたことですが,人間は一部の人を除けば,もともと一度で読んですべて暗記できるように創られていないのだそうです。そうだとすれば,忘れることを前提にして,何度も触れるなかで徐々に覚えていけばいいので,悲観的にならず,淡々と勉強していくことを常に心がけていました。
◆テキスト・参考書について
私は1冊しかテキストは購入していません。なぜなら,何度も見直せることが重要だと思ったからです。しかし,デメリットとしては,あまり詳しく書かれていないことが挙げられますが,その点については,購入した過去問の解説に理由を比較的多く書いているので,その理由付けをポストイットに書いて,それをこまめにテキストに貼り付けたり,気に入った図表があれば,一度コピーしてそれもテキストに貼り付けたりするなどして補強していきました。
これは,私が,司法試験対策でもしてきたことで,[1]理由を書くというプロセスを通じて,できるだけ関係づけて覚える点と,情報を一元化できる点で有益で,[2]図表を見ておくことで,膨大にある知識を整理する点で有益と思い,採用した勉強方法です。ちなみに,他の大学院の友人も同じ方法を採用している人もいるので,多少時間はかかりますが,お勧めします。
◆権利関係の学習について
民法や借地借家法などは,ある程度は理解できていたのですが,より傾向をつかむために,過去問を解きました(1回まわす)。しかし,区分所有法や不動産登記法などは,それまで全く勉強していなかったので,そこは,テキストで一度は通読して,過去問で間違ったところやあやふやなところを,その都度テキストで確認していきました(2回まわす)。ちなみに,区分所有法や不動産登記法は勉強しても,司法書士試験で役立ちます。
法令上の制限,宅建業法については,まず一回テキストを通読しました。あまり分からなくても,定義や制度趣旨などはマーカーで色を塗っていきました。この段階はとにかく早く読み終えることを意識しました。全体像さえつかめれば,それだけで十分です。
次に過去問を解くのですが,一回目なので,たとえ正解していても,テキストの該当箇所を読んで確認しました。時間はかかりますが,私はこの段階こそが天王山であり,ここを我慢してできるかが勝負の分かれ目だと思い,細かい知識であっても,できるだけ理由づけでポストイットに書き,理解していくことを心がけていました。
これが終わると,もう一回過去問を解くのですが,ここでは間違った部分かつ不安な部分だけをテキストで読み返しました。
この段階では,条文もなるべく読むこともお勧めします。そして,その際に条文がどの章節に書かれているかを意識して読むことは,その章,節に関連する知識も有機的に理解できることにつながります。しかし,時間との関係上省略してもかまいません。
免除科目については,自分の購入したテキストには載っていなかったので,過去問をベースに自分でPC にまとめていきました。今はインターネットで,定義,過去問の選択肢や解説を載せてあるサイトもあり,それを適宜コピーしていき,定義を大切にしながら覚えるようにしました。
◆直前期について
直前期は,書店で市販されている予想問題集を2冊買い(10月初め),時間を計って解きました。そして,復習の際に,新たに発見できた理由付けをまたポストイットに書いて,それをテキストに貼っていきました。また,不安や苦手なところは,再度,過去問を解きテキストを読むということをしていました。
私が常に心がけていたことは,[1]理由付けを大切にして理解する,[2]覚えるべきところは覚える,[3]勉強時間は十分に確保する,[4]今勉強していることは必ず無駄ではないことを意識する,の4点です。特に,[3]は本当に苦労しましたが,休日か否かを問わず,毎日毎日大学院に朝早く行って,少しでも多く宅建対策に時間を当てるようにしました。
私は,結果的に短期間で,運良く一回で合格できましたが,実際は,大学時代からの勉強の蓄積があるからこそ合格を達成できたことは否定できません。
仮に,民法の私的自治の原則も知らないような大学1年生が宅建の対策をするとすれば,やはり少なくとも半年は,勉強に専念すべきなのではないでしょうか。
[4]については,例えば,今年の耐震強度偽装事件などで建築基準法の知識があれば,具体的にどの条文が問題になるかを関連付けて考えることができたり,他の資格試験にも勉強は活かせたりするはずです。
最後に,こうして宅建の勉強をでき,そして合格できたのは,親による経済的・精神的な援助や大学院の親友による課題の援助のおかげです。深い感謝の念を抱きつつ,筆を置きたいと思います。
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